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「萩乃露 ミネルヴァの梟(ふくろう)-自然栽培旭米仕込 純米酒-」の蔵出しを開始します。

この度、地元で無農薬・無施肥の自然栽培した「旭」米を100%使用した純米酒を発売いたします。

和食はもちろん、フランス・イタリア・スペインなどの多様な料理とのペアリングを前提として、自然栽培の「旭」米の透明感あるやわらかな味わいと生酛仕込の酸を基調とした、軽やかで余韻の長い味わいを目指しました。

今回の取り組みにつき長文となりますがお伝えしたいと思いますので是非お付き合いください。

-点と点がつながる-

弊社では当地の特徴的な風景である棚田の保全に向け24年前より「里山」、3年前より「美里」に取組んでいます。また、滋賀県発祥の酒米「渡船(渡船二号)」の復活栽培では昨年よりもみ殻のアップサイクルとCO₂削減、土壌改良を両立する循環農法に全国に先駆けて着手しました。そして今回着手した自然栽培米の取り組みは今年から棚田休耕田の再生の取り組みにも進展しつつあります。20年以上に渡り取り組んできた様々なことが、酒造りの未来が米造りと地域の未来に繋がるような、当地でしかできない酒造りの姿が形作られてきたように感じています。

-自然栽培米の特定名称表記-

初めて使用する旭米ですので一般的な酒米と同様に農産物検査を農家さんに依頼しました。2等の判定を受けましたのでラベルに純米酒と表示することは可能です(純米酒など特定名称をラベルに記載するには、農産物検査で3等以上でなければ名乗れません)。

慣行農法においては米の品質を判定するため農産物検査に意味があると思いますが、自然栽培においては農家への理解と信頼関係が第一であり、農家に検査費用の負担を増やしてまで実施する必要性に疑問を感じています。今後農産物検査は受けない可能性もありラベルに純米酒の表示はしませんでした。

-自然栽培米を育む圃場-

今回旭米を栽培した圃場は弊社から1㎞ほどの所にあり、萩乃露と同じ空気、同じ水の土壌です。そして以前の農家さんが45年、現在の農家さんが5年と合計半世紀自然栽培を続ける奇跡的な圃場です。

しかし近隣では慣行農業がされているため残留農薬検査をすることには意味あると感じましたので、残留農薬検査を受け、確かに農薬が検出されないことを確認しました(残留農薬検査は高額ですので農家と弊社で出し合いました)。

-自然栽培米の特性と価格-

自然栽培は雑草との戦いで大変な労力で栽培されます。そのため農家さんが納得できる言い値で購入すると決めていました。私の予想を越え、山田錦の2.5倍程度と大変高価です。当初は吟醸酒としての醸造も検討しましたが、自然栽培の旭はタンパクが少なく透明感の高い米でしたので極端な精米をすることなく、精米歩合は65%としました。

原料米の価格だけを考えれば小売価格は720ml 3,800円程度になると想定していました。しかし実際に醸造してみたところ、昨年は多くの酒米が夏の高温で溶解が進まない中、大変順調に溶解してくれました。

品種特性なのか、自然栽培の効果か、栽培時期(田植えが6月末と遅く、収穫も11月と全体に遅い)の影響なのか、稲木架けによる自然乾燥の影響なのかは不明です。しかし結果的に想定よりも多くのお酒が得られ今回の価格が実現しました。決して安いお酒ではありませんが、ご家庭でも飲食店様でも提供いただける価格に収められたと感じています。

-「旭」について-

「旭」はコシヒカリなど現代のお米の源流で、京都の向日市が発祥の米と言われています。向日市で生まれた「旭」は西日本に伝播し、各地で品種改良が加えられ「滋賀旭」、岡山の「朝日」など各地で旭の後継品種が生まれました。今回の「旭」を栽培した真栄田(まえだ)勇一さんは向日市の農家さんの元で自然栽培を学んだ後6年前に当地に移住されました。

「旭」の種籾は一般に出回ることが無く、各農家が一子相伝で受け継いでいます。真栄田さんは米造りを学んだ農家さんから「旭」の種を受け継いで当地に来られました。古い歴史を持ち伝承されてきた品種ですので確かなことは分かりませんが、「京都旭一号」の種であると受け継いでいらっしゃいます。

-米づくりのみらい、酒造りのみらい-

現在弊社の地元では地域を支えたベテラン農家の高齢化が進む一方で新規就農者の中には自然栽培に取組むネットワークが広がりつつあります。令和の米騒動は今まで通りでは未来の酒造りも立ち行かないのではないかと強く感じさせられています。地域が健全に継続し酒造りを未来に継承できる様、志を持った農家をしっかりと支えられる酒造りを続けていきたいという決意を「ミネルヴァの梟」には込めております。

-「ミネルヴァの梟」とは-

ミネルヴァはローマ神話の女神で智恵の神様です。ミネルヴァは梟を従えており、梟自体が智恵の象徴とされています。米づくりも酒造りも過去からの叡智の結晶といえるもので、過去から連綿と続く叡智の延長線上に今私たちはいて、これからの未来を描いていく必要があります。その遥かに続く道程を高い木の上から梟が俯瞰している、そんな遠大なイメージも梟には重ね合わせています。

 「ミネルヴァの梟」に込めた思いをラベルに記載しております。

日本酒は今、ここでしか生まれ得ない、偶然と必然が紡ぎ出す神話的なものだと感じます。

このお酒は土壌と向かい合い無農薬・無施肥で自然栽培した伝承米「京都旭一号」を、微生物の

活動を巧みに活かす伝統手法で醸造しました。

自然と人、伝承と未来。対立するものを調和に導く叡智から日本酒の新たな地平が広がります。

のびやかで洗練された味わいを世界の料理と共にワイングラスでお楽しみください。

-「ミネルヴァの梟」のデザイン-

今回ご縁を得て忠田愛さんの作品をラベルに採用させていただきました。柳の炭を用いた忠田さんの新しい作品で、発表前に見せていただきこのお酒にとてもしっくりと行くと感じました。伸びやかでいて、深みのある作品です。

ラベルデザインや命名などやり取りをさせていただき、忠田さんの作品は「ミネルヴァ」に、お酒は「ミネルヴァの梟」に命名されました。

今後末永く自然栽培、自然栽培による地域の再生を支えるために「ミネルヴァの梟」に取り組んで参ります。製造数量も限られるため、販売店さんは限定されますが、応援のほどよろしくお願い申し上げます。

自然栽培米「旭」100% 生酛仕込

萩乃露 ミネルヴァの梟 720ml 2,260円(消費税込 2,486円)

精米歩合65%、アルコール度数13%

呑み方:冷酒◎ 常温◎ 燗酒〇

萩乃露

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